主な症状
長引く咳(慢性咳嗽、遷延性咳嗽)
最近、発熱が無く全身倦怠感は無いかあってもたいしたことが無いのに咳が長引いてお越しになる方が多くなりました。それも、内科等で治らないからと転院されるケースも相当数見受けられます。当科で解決できる場合もかなりあるのですがそれでも全く良くならないことも少なくありません。
原因と治療法
一口に咳といってもその原因は、大変多く病歴や症状だけでは判別できないケースが多く診断が容易にできないことがあります 。大まかに分類するだけでも、アレルギー(好酸球性炎症)、好中球性(化膿性)炎症、ウィルス等の感染症、薬の副作用、腫瘍、呼吸器以外の疾患(逆流性食道炎など)、肺結核、心因性のものなどがあります。アレルギーだけでも咳喘息、アトピー咳嗽、喉頭アレルギーなどがあります。
それらを正確に鑑別するには、胸部単純X線撮影、副鼻腔単純X線撮影、胸部CT、血液検査、喀痰検査、呼吸機能検査(スパイロメトリー、気道過敏性検査、咳受容体感受性検査)、気管支鏡検査etc. が必要です。それらの検査を全部するには大学病院や呼吸器専門病院に行かなくてはならないし、時間や費用も相当かかります。慢性・遷延性咳嗽の患者全員に施行すると医療機関がパンクし社会医療基金が枯渇し、あなたの出費もバカになりません。また治療開始時期も大幅に遅れます。
そこで実際は、病歴や症状からある程度見当をつけ治療的診断(とりあえず治療し効果判定による診断)をすることになります。
「痰がなく咳が続く場合」、約6割が好酸球性炎症で主に咳喘息とアトピー咳嗽があります。両者は若干臨床上の違いがあるのですが、前者は抗ロイコトリエン剤、気管支拡張剤、吸入ステロイド剤が効き後者は抗ヒスタミン剤、吸入ステロイド剤が効きますのでそれらを症状に応じて組み合わせて使うことになります。喉頭アレルギーに対しても同等の治療で軽快いたします。
次に「痰のある咳」についてですが、耳鼻咽喉科で取り扱うのは副鼻腔気管支症候群(以下SBS)があります。ただしSBSのうち下気道疾患がびまん性汎細気管支炎のような重症な場合は、呼吸器内科の受診をお勧めします。治療は、副鼻腔炎単独の治療とほとんど同じでマクロライド系の抗生物質と去痰剤、消炎酵素剤を用います。処置は鼻処置、鼻洗浄、鼻腔ネブライザーを行います。
風邪などの急性上気道炎によるものは、ほとんどの場合自然治癒しますのでそれまでの間鎮咳剤を服用いただきます。
アレルギー性鼻炎が合併しているときは、咳喘息やアトピー咳嗽として抗ヒスタミン剤、抗ロイコトリエン剤を投与して治療いたします。喉頭アレルギーに対してもおおむね同じ治療ですが場合によっては副腎皮質ステロイド剤を使用する場合もあります。
その他気管支の感染はそれに応じた抗菌剤にて治療します。
それでも治らないときは、肺炎、COPD、肺結核など耳鼻咽喉科以外の専門的な検査や治療が必要ですので呼吸器内科での治療を薦めています。