似て非なる、アレルギー性鼻炎と副鼻腔炎
上記二つの疾患は、原因も症状も別のものです。
アレルギー性鼻炎の場合は花粉やダニなどの抗原(アレルギー反応を起こす物質)が鼻腔(鼻の穴)にはいると過敏反応を起こします。それを排除しようとくしゃみ・鼻水をだし、抗原の再侵入を防ぐために鼻づまりが起こります。
一方で、副鼻腔炎は副鼻腔の細菌感染症です。人間の顔の骨の中には副鼻腔と呼ばれる空洞がいくつかあります。
副鼻腔内の細菌を排除しようとして白血球が細菌を食べ、膿になり鼻腔内に排泄されます。それが膿性鼻汁(ドロッとした鼻汁)となり、鼻の奥からのどに流れます。これを後鼻漏(こうびろう)と言い、のどの炎症や気管支の炎症を引き起こす原因になります。 上記の前頭洞、篩骨洞、上顎洞などを副鼻腔と呼びます。
ふたつの疾患の共通点は、免疫機能が働いて炎症を起こし疾患の原因となる物を排除しようとして症状を発現しているところです。 違うところは原因がアレルギー性鼻炎の場合は人体にとって無害の花粉やダニの糞や死骸ですが、副鼻腔炎は人体にとって有害な細菌です。 言い換えればアレルギー性鼻炎は無駄な炎症(症状)で、副鼻腔炎は必要な炎症(症状)です。 そのため治療が大きく異なります。
アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎の治療法とは!?
アレルギー性鼻炎は無駄な炎症によって引き起こされる症状(くしゃみ・鼻水・鼻詰まり)を薬でブロックするのが主な治療です。ひどい場合は、点鼻薬や内服でステロイドを投与し免疫機能を低下させて炎症を鎮めることも行います。しかし副鼻腔炎は感染症です。
感染症による炎症症状を薬物でブロックすると、その治癒過程を阻害し治るどころかむしろ悪化します。
アレルギー性鼻炎では許された鼻水を止める行為は副鼻腔炎では許されません。
副鼻腔炎の治療は、抗生物質で細菌を殺菌したり、鼻水を増やす薬を使って膿の排せつを促したり、足りない分を院内で副鼻腔内を洗浄して膿を洗い流します。
どちらも原因物を排除するのは必要です。
アレルギーならマスクをして新たに抗原が入ってこないようにし、副鼻腔炎なら抗生物質で細菌の増殖を抑えたり洗い流したりします。
困るのは、2つが合併して表れたときなのです。
両者の取り扱い上の違いについては、おおよそご理解いただけたものと思います。
この両者が別々に起こったのなら特に問題はないのですが、問題はアレルギー性鼻炎と副鼻腔炎が同時に起こった場合です。 花粉症を放置している間に細菌感染を合併してしまった場合や、風邪をひいて副鼻腔炎を合併してもたもたしている間に花粉が飛んできてアレルギーを合併してしまった場合などがあります。
くしゃみ・鼻水で来院されますが、同時に鼻水が膿性(いわゆる「青っぱな」です)で頭の重たい感じや後鼻漏(鼻汁がのどに流れること)も同時にあります。
またアレルギー性鼻炎を薬物で強力に鼻汁を止めている場合も副鼻腔炎を合併することもしばしばあります。鼻汁はある程度ないと鼻腔内を清潔に保てないので薬で鼻汁流出を抑えると、副鼻腔炎への感染の確率は高くなってしまいます。
では両方の疾患が合併した場合、どうやって治療するか?
両者が合併してしまった場合、抗アレルギー剤で治療すると副鼻腔炎が悪化するケースがしばしば見られます。
まずアレルギーをどうするか判断するわけです。
アレルギーが軽ければ副鼻腔炎の治療を優先しますが、アレルギー症状(くしゃみ、水様性鼻汁)が強い場合でも強力に治療はせず効き目の弱い抗アレルギー剤を使用しながら副鼻腔炎の治療を強力に行います。
いずれにしても鼻の洗浄等やネブライザー(抗生物質等の吸入)によって鼻の衛生を保つのは必須ですので頻回の通院は避けられません。治療期間が1カ月以上かかるケースも少なくありません。
両方が一度に罹ってしまうと治すのが大変ですので予防が大切です。
副鼻腔炎だけに罹っている方は、
- 花粉症の季節に入る前に治しておく
- マスク等で花粉や他のアレルゲンの吸入を避ける
アレルギー性鼻炎だけに罹っている方は、
- 細菌の温床となる鼻汁を鼻腔に溜めないためにこまめに鼻をかむ
- 汚い手でみだりに鼻を触らない
- 鼻汁を鼻の奥に吸い込まない
- 抗ヒスタミン剤だけの治療に頼らず定期的に鼻処置・ネブライザーに通う
- できるだけ抗ヒスタミン剤によって症状が完全に止まるような強力な治療は行わない(さっきお話したように鼻汁がなくなって鼻腔内が乾燥し副鼻腔炎に感染しやすくなります。)
- 鼻呼吸を心掛ける(口を開けて呼吸しない)
・・・等があります。
アレルギー性鼻炎から副鼻腔炎を合併するケースのほうが圧倒的に多いようです。
アレルギー性鼻炎の治療中に水鼻から黄色いあるいは青い鼻汁(膿性鼻汁)に変わってきた、効いていた薬がくしゃみは抑えられているが鼻汁が途中から増えてきたという方は要注意です。
これを読んで少しでも皆さんが正しい知識を得ていただき、健康の一助となれば幸いです。